---その9:発酵マット完成!〜ワイルドノコ☆になる---
7月下旬。発酵マットが完成した。気温の高い日はマット内部に熱が篭っていることもあるので厳密に言えば完成とは言わないかもしれないが、容器に小分けにしてエアコンを効かせればそう高温になることもないだろう。部屋の気温が28度を超えないよう、嫁さんにお願いして小遣いの3,000円減額を条件に常時エアコンを稼動させる約束を取りつけた。本当なら25度前後に設定して菌糸瓶なんかも使ってみたいところだが、小さな子供がいるので28度が限界だ。まぁ、外気が36度とか37度とかになっている中で常時28度に抑えることができるなら、それでも充分に快適な飼育環境と言えるだろう。何だかんだと言いつつ、夫の趣味に理解を示してくれる嫁さんに感謝である。
と、いうわけでルアーケースの未発酵マットで飼育していたサキシマヒラタの幼虫たちを、100円ショップで調達した丸いタッパに引っ越しさせた。いきなり発酵マットに入れて拒絶する個体もいるのではないかと思ったが、意外とあっさり受け入れてくれたようで、すんなり潜っていった。タッパの側面からは発酵マットを食べる幼虫の姿が見えた。思ったより順調のようだ。
カプセルホテル(人工蛹室)のコクワの蛹は、2頭が黒化して☆になっていた。残る一頭は無事に羽化したのだが、本来はひと月ほどじっとしているはすなのに、なぜかオアシスの上を歩きまわっている。体の色にまだ赤みが残っているのに、もうゼリーも食べられるようだ。何度人工蛹室に戻してもすぐに出歩くので、仲間のところへ・・・と思ってコクワの集団飼育ケースに入れたのが失敗だった。最初は喜んでゼリーを食べているように見えたが、30分ほど経ってから再びケースを覗くと、なんと先住者の♂によって新参者の♂が挟まれてしまっているのだ。一人前に歩き回ることはできるものの、まだ赤みの残るその体は柔らかく、上翅にザックリと歯形が残ってしまった。おそらく、下翅を通り越して傷は胴体にまで達していると思われる。
取り返しのつかないことをしたと慌てて小プラケにマットを敷き、そこに負傷したコクワを収容してゼリーを与え、しばらく見守っているとコクワは何もなかったかのようにゼリーにかぶりついた。その姿を見てホッとする。当然翅を広げて飛び回ることなどもうできないとは思うが、もしかしたら傷つきながらも生きてくれるかもしれない、と淡い期待を抱いた。が、翌朝ケースを覗くと、コクワは周囲が明るいにもかかわらずマットにも潜ってはいなかった。触ってもほんの少し触角を動かすのみ。やはりダメか・・・と半分諦め気味で出勤し、帰ってくるともう全く動かなくなっていた。
コクワはそのかわいらしい見た目とは裏腹に、縄張り意識が強く、意外と獰猛な一面を持っているようだ。ミヤマなんかだとお互いに挟み合って、力の弱い方は挟むのをやめる。すると力の強い方も相手を放し、敗者はスゴスゴとその場を去る。ノコギリの場合はもっと派手で、相手を挟んだと思うといきなり投げ飛ばすという大技を見せる。だがいずれの種も、今回のコクワのように相手を殺すほどの攻撃は滅多にしない。コクワの気の荒さは、さすがはヒラタと同じDorcus属なだけのことはある。
悲しい話はもう一つ。2頭いる野外採取個体のノコギリ♂のうち、先に採取したほうが絶命した。この個体は獲ったときから様子がおかしかった。落ち着きのない様子で歩き回るのはどうやらノコギリに共通した特徴のようだが、こいつは当初から自分の後ろ足同士を絡ませてしまうことがよくあったのだ。一週間ほど前から、右後脚の付節が欠け、右後脚を萎縮させて5本脚で歩くようになったかと思うと、次第に衰弱して動きが鈍くなり、最後には全く動かなくなってしまった。はじめは「ノコギリは短命なので、寿命が来たのだろう」と思っていたが、どうやら細菌性の病気でこのような症状になるものがあるらしい。野外採取個体なだけに病気くらいは持っているのかもしれないが、背中の赤みが美しく気に入っていた個体だけに残念だ。生きているうちに写真を撮っておけば良かった(というわけで今回も画像が1枚もない)。
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