---その22:眠りから醒めたクワガタたち〜サキシマヒラタ総決算---
昨年5月より親虫の飼育を始め、38頭の幼虫を得たサキシマヒラタ。秋に里子に出した友人宅では、最近になってようやく羽化の報告が届くようになったところだが、手元に残った個体については全て羽化を終え、4月中旬には活動を開始している。その後バタバタとしてしまい、手術だのおたふくかぜだのと障害も多く、ここまで更新が遅れてしまったが、この辺で現存するクワガタについてざっと振り返ってみたい。
まず、クワガタ飼育のきっかけとなったノコギリクワガタだが、7月に羽化したまま昨年中はついに2頭ともマットから這い出すことがなく、今年5月になってやっと活動を開始した。サキシマに見慣れると何とも華奢なイメージだが、気の強さはさすがノコギリで、今日もオオアゴを広げては誰彼構わずケンカを売っている。
我が家で唯一の外産、ファブリースノコギリクワガタが我が家にやってきたのは、昨年の7月だった。今年1月、ケースにダニが大量に湧いてしまい、それを発見したのが深夜だったため、いつものようにケースの熱湯消毒や新しいマットを用意することができず、致し方なくベランダに出した。成虫の寿命は4〜6ヶ月とのことで、いずれにしても死期を迎えるころだったはずだが、翌朝、一見凍死してしまったかに見えるファブを温室に戻すと、数時間後には何事もなかったかのように活動を再開。3月に♀は☆となったが、♂は6月現在、前足の付節が一本無くなっているものの、ゼリーの食いっぷりなどは健康そのものだ。間もなく我が家に来て一年となるが、ファブリースとしては恐ろしく長生きと言えよう。
昨年夏に、嫁さんの婆ちゃんのところに(何と、婆ちゃんの友人から)1頭の♂が持ち込まれたのを皮切りに、庭先で捕まえたり寝室に飛び込んできたりと、既に何頭存在するのかわからない♀たちに囲まれていたハーレム状態のコクワガタ。冬の間も時々は顔を出してゼリーに頭を突っ込んでいたが、つい先日、件の♂と♀1頭が☆となった。この他、冒頭のノコギリと同時採集してタッパの中で羽化した超小型のコクワペアも、数日前に♀が他界し、早くも男やもめとなってしまった。ハーレムケースに入れてやっても良いのだが、あまりに♂が小さいので、周りの♀たちにバカにされていじめられたりはしないだろうかと少々心配である。
オオクワは嫁さんの従兄弟(小学4年)の元に行った3頭の個体が☆となった以外は、他の友人宅のものも含めて全て存命。元々、寒い地方にも生息する種なので、越冬はお手の物といったところだろう。従兄弟の個体が死んでしまったのは、恐らく乾燥が原因と思われる。今年は更に家族が増えるのでクワガタの飼育は規模縮小を余儀なくされるが、この従兄弟のために特例的にオオクワのペアリングを行った。一つのケースに♂と♀を入れ、交尾を確認してすぐに引き離した。まさに一夜限りの、泡沫の恋である。既に2本の産卵木にいくつかの産卵痕も確認し、近いうちに幼虫を割り出す予定だ。まさかサキシマのように20も30も産んだりはしていないと思うが、従兄弟の母親が「コストは嵩んでもいいから手間のかからないもの」を希望しているので発酵マット飼育は無理。必然的に市販の菌糸瓶が候補に上がるが、割り出してみないと何頭いるかわからず、事前に個体分の菌糸瓶を調達しておけないのがツライところだ。
そしてサキシマヒラタである。38頭回収した幼虫は、うち12頭を友人に託した。残った26頭のうち1頭は、孵化から数日で☆となり、別の1頭も亜終令の姿を見ることなく、菌糸瓶の中で姿を消した。残り24頭は順調に成長していたが、最後のマット交換時に大きな♂が脱腸して数日後に他界。成虫の体を手に入れることができたのは、♂11頭+♀12頭であった。しかしこの全てが無事に羽化を完了したわけではなく、ある♂は脱皮に失敗して羽化不全となり、別の♂のオオアゴの長さが左右で異なっていたのは前回報告したとおりである。羽化不全の個体は後食を開始する前に絶命するとの話を聞いていたが、どうやらこれは鞘翅を閉じることができないために体の水分が蒸発し、乾燥によって死んでしまうということらしい。うちのように蓋に僅かな空気穴を開けたタッパにオアシス人工蛹室を入れ、湿度がしっかりと保たれた状態であればかなり長期間に渡って生き続けることができるとのこと。実際にうちの個体も、ボロボロになった翅など気にするそぶりもなく、オアシスを好き勝手に削って都合の良い環境を自分で作り、ゼリーもしっかり食べている姿を見ると、不思議と微笑ましいような気持ちになってくる。
この他、最後に羽化した個体はオオアゴの動きに障害を持っており、一本、また一本と開かなくなっていった。閉じる方向には力が働くようだが、自力で開くことが出来ないのだ。羽化して間もなくは通常どおりに動いていたので恐らく病気か何か、後天的な問題だろうと思われる。この個体はマットの中から初令を回収した際に肢が一本欠けていたのだが、その後の加令で肢も徐々に復活し、形的には何ら問題ないどころか逆に良い部類に入るほど美しく成長したものだったので、このオオアゴの機能障害は実に残念である。
無事に羽化した個体については、既にかなりの数が里子に出ており、残りはごく僅かだ。良い個体ほど先に貰われていき、手元に残るのは形や機能に難のあるものばかりだが、そういう個体のほうが愛着が湧いていたりする。既述のとおり飼育規模縮小のため今年はサキシマの累代繁殖をすることができないが、この一年で随分と貴重な体験をすることができた。ガガンボが一匹飛んでくるだけで泣くわ喚くわの大騒ぎだった麻綾も、クワガタが来たことで虫嫌いを克服した。私自身も、クワガタに触れているときはすっかり童心に帰っていたと思う。仕事のことや家庭のことなど、その瞬間だけは何もかも忘れて世話に没頭できた。我が家に来た3頭のうち最もたくさん産卵してくれた功労者たる♀は、ゴールデンウィークが終わる頃ついに力尽きて☆となってしまったが、彼女の多くの子供たちは新たな飼い主の元で今日も元気にゼリーにかぶりついていることだろう。
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