---その13:サキシマ終令へ〜ノコギリご乱心---
8月下旬。なんと、サキシマの幼虫が終令になっていた。ある朝飼育タッパを見ると、幼虫の頭幅がいきなり1cmを超えていたのだ。その姿を見た時、正直「な、なんだこれは」と思った。初令から亜終令に加令したときもかなり驚いたが、今回はその比ではない。大アゴも長く鋭く、これまでの「かわいらしい」姿から一変して精悍な顔立ちに変わっていたのである。この手の虫を苦手とする人は普通「気持ち悪い」という表現をするが、終令となった幼虫の姿は、気持ち悪いを通り越して「怖い」と思わせるものがある。「こんなのに指でも噛まれたら大変だ」という意味の怖さでもあるが、こんなにも急激な成長をする生物が存在することに対する怖さでもある。以下に写真を掲載するので、亜終令との(特に頭部の)大きさの違いを比較していただきたい。孵化からわずか2ヶ月足らずの間に、ここまで成長するのである。終令の次は蛹室を作って前蛹・蛹となるわけで、果たして羽化までに本当に8ヶ月もかかるのだろうか。もっとも、こうしてクワガタを卵から飼育するなどいままで経験のないことなので、2ヶ月で終令になるなど実は驚くべきことでもないのかもしれないが。
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上左:亜終令幼虫
上右:終令幼虫
下左:終令幼虫の頭部アップ
上段左:OLYMPUS E-10
上段右および下段:OLYMPUS C-2500L
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これを機に、既に終令となった個体と、間もなく加令すると思われる大き目の亜終令を、タッパからガラス瓶に移すことにした。空になったインスタントコーヒーの瓶に発酵マットを詰め、幼虫を投入し、蓋をする。蓋は内側のボール紙を剥がしておけば特に空気穴を空ける必要などないらしいが、私は念のために蓋の中央部にドライバで穴を空け、コバエとダニの侵入を防止するために紙を一枚、瓶と蓋の間に挟むようにした。発酵マットは残りがかなり少なくなってきたので、次回の餌交換に備えて新たに20リットルを仕込んだ。気温がだいぶ下がってきたので、強力粉の他に砂糖水で予備発酵させたドライイースト(分量は適当)を加え、加水には40度のお湯を使用したところ、前回は発酵熱が出るまでに3日を要し、その後ひと月以上に亘って発酵を続けていたのが、今回はその日のうちにかなりの熱を発し、2週間足らずで常温に戻った。マットの色は前回ほど黒くはないが、ほぼ無臭の状態となったので、9月中旬まで寝かせれば使用可能となるだろう。
この時期になると一年モノのカブトはだいぶ弱ってくるようで、カブトムシの♀はついに☆になり、♂も付節が取れてかなり動きが鈍くなってきた。ここいらで今年のカブトは終わりかと思った矢先、夜寝ていると突然、ブーンという大きな音が。電灯を点けるとプリンタの上で♀のカブトが仰向けになってもがいていた。♀特有の体毛も抜け落ちることなくびっしりと生え、この個体が羽化からまだ間も無いことを物語っていた。もし7月に羽化したものが逃げ出して、家のどこかにいままで潜んでいたのであれば、ひと月以上も経ってこんなに元気なはずもなく、どう考えてもここ数日のうちに屋外から飛び込んできたものとしか思えない。コクワの♀に続いての来訪者に、「この家は、やはり昆虫を惹きつける何かがあるに違いない」と思わざるを得ないのであった。・・・というわけで、突如として後妻をもらったカブト君だが、すでにご老体の彼が新妻の尻に敷かれることは必至だろう。
橋上採取のノコ♂とミヤマ♀は、一年モノの割に意外と元気な様子だ。ミヤマはまだ交尾を済ませていなかったと見えて一向に産卵の気配を見せない。まぁ、産んだところでミヤマを育てる技術など、私は持ち合わせていないのだが。ノコは先に採取したほうが早々に逝ってしまったので期待してはいなかったが、残った1頭はかなり丈夫なようである。ミヤマの♀共々、冷房を効かせていない廊下でこんなにも長く生きてくれるとは思わなかった。ただ、気の荒さというか喧嘩っ早さが災いして、周りに誰もいないのに一人で暴れまくって大あごの先端を折っていた。こういうのを「ご乱心」というのだ。
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