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pet and aquarium

---その12:サキシマ、マットに産卵〜ファブリース登場---


 同じく8月中旬。怪我を負った個体を保護する目的で単独飼育とした♀は、散々な結果の産卵木を尻目に狭いケースでせっせと産卵を続けていた。ケース底面のあちこちに乳白色の卵が見られたので、それらを回収すべくマットをひっくり返してみた。出てきた卵は何と13コ。もちろんこれらが全て孵化するわけではないだろうが、たった1頭でこれだけ産んだのだ。あんまり産卵すると親虫が弱ってしまうと思い、急遽奮発して「ヨーグルプリンゼリー」なる超高級昆虫ゼリーを買ってきた。30コ入りで1,000円近くするもので、普段与えているものより遥かに高い。いかにも高級そうな紙の箱に入っており、産卵促進と体力回復、越冬前の栄養補給に効果があるらしい。容器の蓋を剥がすとそのまま口に入れたくなるような甘くフルーティな香りがする。凍らして食べたらさぞ美味いだろうな・・・と思いながら、たくさんの子孫を残してくれたその♀の体力回復と、さっぱり産んでくれなかった♀2頭の産卵促進のために与えてみることにした。里子に出す予定があるので、この2頭がきちんと産卵木に産んでくれないととても困るのである。

 さて、この「ヨーグルプリンゼリー」を買いに行った時、私はあるとても魅力的なクワガタに出会った。そのクワガタは日本のクワガタと違い、上翅の縁に黄褐色の縁取りがあった。ケースには「ファブリースツヤクワガタ」と書かれたラベルが貼ってあり、値段は\2,480-とあった。かっこいいし美しいし値段も手ごろ。思わず買ってしまいそうになったが、嫁さんに「(産まれた分は仕方ないとして)これ以上は増やさない」と約束していたし、外産には手を出さないつもりでいたので、ぐっと堪えて購入を踏みとどまった。外産の昆虫は、万が一逃げ出したりしてしまうと自然環境に与える影響が大きすぎるのだ。・・・それは離島に住むサキシマヒラタでも同じと言えば同じだが・・・。
 その翌日、あるクワガタ愛好者に「ファブリースという、とても美しいクワガタが売れらていて・・・」と話したところ、その人物は既にファブリースを飼っていた。なんでもワンペア入手して産卵させてみたところ、やたらとたくさん増えてしまい(・・・うちのサキシマ君のようである^^;)、放虫するわけにもいかないのでもう標本にするしかないと言う。標本にするということは、生きている虫を殺すということだ。私も昔は「昆虫採集セット」と称する薬と注射器がセットになったものを近所の駄菓子屋(で薬と注射器を売ってるのもどうかと思うが)で買ってきては、夏休みの自由研究に昆虫の標本を作ったことはあったが、いまはもうとてもかわいそうで昆虫を殺す事などできなくなってしまった(クモに関しては昆虫ではないので話は別だ)。せっかく飼育下で生まれてきたものを、天寿を全うすることなく途中で殺してしまうなど、私には考えられないことである。尤も、美しい個体を美しいままの姿に留めておきたいという気持ちはわかるし、そのためには自然死を待ってボロボロになった虫では役に立たないことも知っている。もちろん外産の昆虫を野山に放すよりは標本にするほうが良いに決まっているのだが・・・。私は彼に「標本が作りたくて標本にするのならそれを止めることはできないが、もし手に余るから仕方なく殺すというのなら、ぜひ私に引き取らせてくれないか」と伝えた。彼はその言葉をたいそう喜んでくれ、「ぜひ大事に飼ってやってほしい」と言ってくれた。彼も、自らが育てたクワガタをその手で殺すのは忍びなかったのだ。

ファブリースノコギリクワガタ

OLYMPUS E-10
 翌日、私はファブリースを受け取った。ところが実物を見てみると、どうも私がショップで見たものとは随分様子が異なる。大アゴが短いのは単に短歯型だとしても、上翅の模様が全然違う。ショップのものとは比較にならないくらい、模様がド派手なのだ。基調色は濃いチョコレート色だが、上翅は鮮やかなオレンジで、筆で描いたような黒い紋が入る。♀は若干地味だが、上翅の黒く見える部分はわずかに紫がかっていて光沢がある。断然、こちらのほうが美しい。そう言えば、彼と話しているときにどうも気になることがあった。店で見たケースには「ファブリースツヤ」と書いてあったが、彼は「ファブリースノコ」と言っていた。もしかして・・・と思いネットで検索して調べていると、私がショップで見たものはファブリースではなく「スティーブンスツヤクワガタ」と呼ばれる種らしい。どうやらお店の人が勘違いしてラベルを書いてしまったらしいのだ。「ファブリースツヤクワガタ」などという種は存在せず、ファブリースはれっきとしたノコギリクワガタ属なのである。なお、このファブリース、夫婦仲がやたらと良い。餌皿の下に隠れるときも、餌を食べるときもいつもベッタリくっついている。だからと言って交尾をしているわけでもない。用もないのに、年中くっついているわけだ。しかも♂が♀をギュッと抱きしめていて、はっきり言って、見ていてかなり妬ける。(^^;) まぁ、微笑ましくて良いのだが。
 ところで、私は前述のとおりクワガタを「これ以上は増やさない」と嫁さんと約束していた。そんな中、いくら上記のような事情があったにせよ、突然新しいクワガタを持って帰って無事で済むはずがない。コクワやノコ、ミヤマくらいならこっそり増えていても気付きはしないだろうが、何しろこの派手さである。バレないわけがない。私は嫁さんとの約束を守るため、代りにサキシマヒラタの卵を5コ、彼に引き渡すことにした。x + 2 - 5 = x - 3。結果として、私はクワガタを「減らした」のである。
 彼はDorcus属に関してはコクワくらいしか飼ったことがなかったとかで、この申し出を喜んで受けてくれた。私は早速新たに回収した13の卵の中から、幼虫の体か透けて見えるものを5つピックアップして、フィルムケースに入れて彼に引き渡した。私としてはもっとたくさん渡しても良かったのだが、彼は「5つもあれば充分」と言っていた。我が家の繁殖状況を見る限り、彼の言葉はもっともだ。(^^;)


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