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8月のある土曜日。家族を連れてちょっとしたハイキングに出かけたその帰り道、下の娘がセミの幼虫を発見した。ちょうど上の娘が自由研究のテーマを探していたし、息子も父親に似て虫が大好きなので、たまたま持ち合わせていた昆虫ケースに入れて持ち帰ることになった。
・・・もう30年近く前になるだろうか。作者がまだ横浜にいた頃、近所の団地の敷地内に植えられている椎の木の根元で、アブラゼミの幼虫を捕った事がある。自宅に連れ帰って網戸にとまらせておいたら、翌朝には立派な成虫になっていた。そのときは残念ながら羽化の様子を見ることができなかったので、今回はぜひしっかりと観察してみたい。 さて、30年前と違って今はインターネットという便利な道具があるわけだが、これを使って色々検索してみたものの、連れ帰った幼虫の種の同定は難しかった。まぁ、羽化すれば判ることではあるが。 セミの幼虫は、土中から這い出した後、気に入った場所を見つけるまでウロウロと歩き回るらしい。よく、セミの抜け殻が一ヶ所にかたまって見つかることがあるが、要するにそういう場所はセミ達にとって「人気のスポット」ということなのだろう。 うちで連れ帰った幼虫も、午後7時半くらいにカーテンにとまらせた後、2時間くらいは歩き回っていた。だかお気に入りと思しき場所を見つけると、足をしきりに屈伸させてみたりと、なかなか興味深い動作をしていた。脱皮の前の準備運動なのだろうか。 そして丸一時間ほどが経った後、成虫へのメタモルフォーゼが始まった。この様子は、連続写真でご覧いただきたい。 |
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(20:15)お気に入りの場所を探して歩き回る幼虫。 |
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(22:38)定位置について約1時間後。背中が割れ、脱皮が始まる。 |
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(22:45)横から見た様子。 |
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(22:46)成虫の頭部が顔を出す。 |
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(22:51)のけ反るように殻を脱いでいく。 |
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(22:54) |
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(22:58) |
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(22:59) |
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(23:02)イナバウア〜(笑)。 |
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(23:19) |
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(23:25)翅が伸び始める。 |
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(23:25)正面から。 |
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(23:28)伸びてゆく翅。 |
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(23:30)体を起こしていく。 |
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(23:31)自分の抜け殻に捕まって・・・。 |
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(23:32)腹部を抜く。 |
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(23:33)正面から。 |
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(23:38)翅がだいぶ伸びてきた。 |
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(23:48)透ける翅が美しい。 |
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(23:50)翅もすっかり伸びた。 |
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(00:26)見てるこっちがハラハラ。(^^;) |
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(00:27)伸ばしていた翅をたたんだ。 |
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(00:29)腹側から。腹弁がない。どうやら♀のようだ。 |
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(01:58)残された空蝉。 |
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感動のメタモルフォーゼ、いかがだっただろうか。ご覧いただいたように、翅はあくまで透明。アブラゼミではない。大きさから言ってヒグラシやツクツクボウシでもないことは明白だ。ミンミンゼミならば胴体がもっとずんぐりした感じになるはずだし、クマゼミにしては幅がない。ではこのセミは一体・・・? 赤い複眼、そして背中のこの模様・・・写真ではわかりにくいが、このマクドナルドのロゴを逆にしたような「W」のマークはもしかすると・・・。
最後の空蝉の写真だが、この時点では成虫は脱皮した位置から50cmほどずれたところに移動していた。そのときはまだ、体色は緑色のままから変化なし。朝になればきっと正体も判明するだろうと思いながら、このままカーテンにとめておいて良いのか少々悩む。ちょっと目を離した隙に移動してしまうようでは、朝になったら行方不明になっているかもしれない。かといって昆虫ケースとかに入れて、飛び回って翅がボロボロになってしまうのも悲しすぎる。・・・と、散々悩んだ後、カーテンにとまらせたままにしておくことに。 そして案の定、行方不明に。午前5時に息子が「セミは!?」と起き出して、一緒に探したが見つからず。このまま「結局種類は判りませんでした」となってしまうのは何としても避けたいので、部屋中の家具をどけながらの大捜索。そしてついに見つけた彼女の姿がこれ。
エゾゼミ ・・・と、それはそれとして、一晩ず〜っと一緒に過ごしたせいか、このセミ、人間を怖がる素振りがまるでない。指に掴まらせればず〜っとそのままそこにいる。・・・でもこれってヤバいよね。ここまでヒトに慣れちゃって、自然界で生きていけるのか? |
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エゾゼミの分布については、後から図鑑とネットで調べてみたら、北海道だけではなく本州にもいるのだとか。ただし北海道では平地で普通に見られるのに対し、本州では標高の高い山間部でのみ見られるんだそうだ。これの意味するところはズバリ「涼しい場所でしか暮らせない」ということなのだろう。
アブラゼミやミンミンゼミだったらベランダから放してやれば良いと思っていたが、エゾゼミなんてこの辺じゃ全く目にしない。ただ放してやったところで、残された僅かな寿命の中で♂に出会える機会などないだろうし、そもそもこの猛暑では今日一日持たずに死んでしまうかもしれない。山で見つけた幼虫を連れてきて、一晩かけて感動的な姿を披露してもらって、後は勝手にどこへでも行け、ではあまりに人でなしなので、子供と一緒にクルマで山へ行き、自然の豊かな涼しいところで逃がしてくることに。
見納め つい昨日まで土の中で暮らしてきて、今朝、我が家のカーテンで成虫になり、誰に教えられたわけでもないのにちゃんと飛んでいくことができるその姿に感動し、「お〜!! 翔んだ〜!!」と、子供と一緒に思わず拍手をしてしまった。 さっきまで手乗り状態だったエゾゼミは、あっけなく自然に帰って行った。帰りのクルマの中で息子は「これでいいんだよね。きっとあのセミ、喜んでるよね」と自分を納得させるかのように言葉に出していたが、その瞳は涙で潤んでいた。
土湯・女沼 |